大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(く)90号 判決

本件公訴事実は、被告人が吉澤譲二と共謀のうえ、台東区上野一丁目一五番一〇号大秀ビル五階事務所内から毛皮コート二九枚ほか一九点(仕入価格合計六九四万八四〇〇円)を窃取した、というのであつて、起訴されたものだけでも被害額が七〇〇万円近くに達すること、犯行手口も事務所のドアーをバール等で破壊して室内に侵入して敢行したものであるところ、これに対し被告人は、右犯罪を犯したこと自体については、捜査段階から一貫してこれを認め、第一回公判においても起訴事実を認める旨陳述しているのであるが、他方、被告人の捜査官に対する各供述調書によれば、被告人が右のような犯行をするに至つた動機、経緯、とりわけ共謀の成立状況、更には犯行の態様等に関して、被告人は、盗みをすることを知らないで前記吉澤に連れられ犯行場所に赴いたものであり、同所で同人に強く誘われ逡巡した末結局犯行に加担したものの、その加功の程度、態様は終始同人に追従的であつた旨弁解していることが認められ、また、原審における審理の経過をみると、被告人は原審第一回公判において、検察官から取調の請求のあつた被告人の捜査官に対する供述調書を始めとする関係証拠中、共犯者である右吉澤の司法警察員及び検察官に対する各供述調書については、不同意としたため、被告人の右弁解は裏付けとなる資料を欠き、その真否は、証拠上未だこれをいずれとも確定できない状況にあることが認められる。

ところで、被告人の弁解するところは、かりにこれが真実としても犯罪の成立自体には何ら影響を及ぼすものでないとはいえ、被告人の犯行に対する意思、態度が積極的であつたか否か、また被告人が実行行為に加功した程度や態様がどうであつたかということは、本件において被告人の刑責の度合いを評価し、その量刑を決するうえにおいて大きな影響をもつものと考えられるのに対し、前記吉澤の証人尋問が次回公判期日に予定されている現段階において被告人を釈放すれば、被告人が右吉澤に働きかけるなどして右の点について口裏を合わせるおそれがないとはいえず、また、同人が身柄拘束中であるからといつてこれをすることができないわけでないから、このような場合には、被告人について刑訴法八九条四号に該当する事由が存在するものと解するのが相当であつて、いわゆる権利保釈が許される場合に当らないというべきである。加うるに、記録を精査しても、被告人に対し裁量によつて保釈を許可するのを相当とする特段の事情があるとも認められない。

したがつて、被告人につき右同条同号の事由があるとして本件保釈請求を却下した原決定は正当であり、本件抗告の申立は理由がない。

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